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COCO NOIR

2012.08.18 2012

黒って、
この世のすべての色を混ぜ合わせた色であり
すべての色を秘めた究極の色だと思っているのですが
とっさに浮かぶ私の“美しい黒”は、
マネの黒、ルドンの黒、天鵞絨の黒、黒馬の黒、刺青の墨の黒、漆の黒、
ミンクの黒、かつての川久保玲の黒、仄暗さの中の奥の中心の闇の黒 etc

先週、銀座のシャネルにうちでバシャバシャ使うEAU DE TOILETTEを買いに行ったら
「黒」をイメージしたという、まだ名前もボトルデザインも未発表の
来月発売の新しい香水の匂いの解禁日で、
CHANEL香水愛用の私はすごく嬉しくてさっそくかがせてもらったのですけど
私が普段思い描いている黒のイメージの
深い深いところを探られたような匂いで
もうほんとに、頭の中がキリッとしつつうっとりしたのでした。
そのままムエットをバッグに忍ばせていたのですが
外に出て10分くらい歩いたときに、急にふわっと涙が出てきた。。
わぁ、香りに、感動したんだわ、って感じ。

ワインや料理の味覚に、突如ふわっと泣けるってこと
たまにあったりするのですが、香水ではそうそうない。

というわけで、銀座では昨日先行発売のその香水を
早速手にしたのでした。
名前も予想通り?「COCO NOIR」。
黒に少しだけ金のボトル。シンプルで素敵、って思うけど
このシンプルさの中には得も言われぬ複雑な世界が濃縮。

そこで思い出したのが、中井英夫のこの文。

  「--香りは深い渓間である。香水の金の香もゆらぐ香烟も香料も
   すべてめくるめく深淵を秘めて人々を誘う。その奥処の神殿を
   垣間見た誰しもが知るに違いない。そこに群れ蠢き行き交う者
   の影に似た招待が何かを--」〜中井英夫

今年の秋冬はこの香りが似合う女になりたいものだと思って買ったけど、
私は香りを言葉と歌の中に閉じ込められる人になりたい。
久しぶりに中井英夫先生の文章に触れて、初心にかえったのでありました。

いえ、長々書いたけど
ほんとにものすぅごくいい匂いなのよ(笑)