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2016.04.03「鳥打ちも夜更けには」金子薫

もはや読書は断然Kindle派の私ですが、時々代官山蔦谷に出掛け、
Kindle化されてなさそうな、素敵な装丁の単行本を探したりします。
でもまあ最近は、なんでこんなのが…というくらい
ヘタな文章の若い新人?作家が多い。。
あらすじはすごく面白そうなのに何コレ、というような。
「禁書」という歌を歌うような私には到底いただけませぬ。
山積みの人気作家の本も、読めばきっと感心する面白さのはずですが
わざわざ自分が読まなくても、と思うのです。
新たに好きになって新刊が待ち遠しくなるような作家とは
なかなか出逢えません。

ところが。

ある時、何気なく入った本屋でふと目に止まった一冊の本。
ルドンの絵の美しい装丁、帯には円城塔さんの推薦文。
そして最初の一行を読んだとたん、私はレジへ。

「鳥打ちも夜更けには」金子薫

あとはもう、陶酔Bibliothequeの中の椅子に座っているだけ。
この人の文章、語られる世界を覗いていると
私の心は凪いだ水面となって、言葉のひとひらひとひらが、
打ち落とされた鳥の羽根のように静かに沈んでいくようなのです。
本来お話の中に登場する鳥さえ苦手な鳥嫌いの私なのに
この小説を読んでいると、すっかり鳥打ちの目となっているから不思議。
“架空の港町”を飛び交うカモメやウミネコ、守られる美しい蝶、
鳥打ちの三人の青年、暮らす人々、花畑、鳥たちの墓地。
薄曇りの空からこぼれる陽光はけして眩しくはなく、
烟るように波止場に降りてくる。

誰の絵かはわからないけれど子供の頃から今まで見てきた絵画のなかで
確かにこの港町の光景を目にし、わけもわからず引き込まれただぼぅっと
長い時間をその絵の前で過ごしていたことがあったと
思わせる、描写、なのです。私には。

ああなんかもううまく伝えられないのだけど!

ともかくこの本に出逢えて本当に幸せ。
(90年生まれですって!)
装丁した方もセンスも素晴らしい。

河出書房新社 ¥1,500
(Kindle版もあります)


 

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