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「Les Fleurs bleues」Raymond Queneau

2013.03.20 2013

アリプロファンの紳士淑女少年少女貴族のみなさん、
わたくしたちにはうららかなる春も読書の季節。
私は最近はどんな暗がりでもタクシーの中でも読めるKindle本で
あれこれ読んでおりますが、
でもやはり特別な本は電子本化はされておらぬもの。
今日は素敵なご本をご紹介!

私の人生のベスト10書籍に入る「バルザックと中国の小さなお針子」、
その翻訳者の新島進氏が新訳したレーモン・クノー「青い花」。
(フランス文学がお好きな方なら「地下鉄のザジ」でご存じでしょう。
長らく絶版になっていたものが新訳されました)

主人公は13世紀の騎士オージュ公爵と現代に生きるシドロラン。公爵はしゃべる馬と領地からパリへと旅をし、シドロランはセーヌ川の川船に暮らして川岸の塀に書かれる落書き(彼を誹謗する文言)にペンキを塗りながら、緩やかな川の流れのように日々を過ごしています。この二人はお互いを夢で見ていて、オージュ公が眠りにつくとシドロランが目覚め、舞台も中世から1964年へと飛び交う。大食いで大酒飲みの公爵は満腹になってすぐ眠ってしまうし、シドロランもいつも茴香のエッセンスを飲んで昼寝ばかりしているし、二人が見合う夢はだんだんとひとつの流れに繋がって…。文章は行も空かず時には改行もせずに場面が変わるのだけれど、読者はすんなりと時代移行ができてしまうから不思議! 公爵の方は、13世紀・15世紀・17世紀と、175年ごとに時代を遡って(ジル・ド・レイやサド公爵も友人らしい)、そして現代でパリのシドロランと出逢います。ふたりは同一人物?ふたりの関係は?

駄洒落や新語など言葉遊びもあり、大声で笑ってしまう場面も多々あり、
なんだかともかくもうとても愉しくておもしろいのです。

おもしろい小説って、どんどん先を読みたくてたまらなくなるものと
早く読んでしまうのがもったいなくなるものがあるけれど、これはまさに後者。
じっくり味わいながら、その世界にゆっくり留まって遊びながら、というような。
私は夜毎、飲んだことのないナゾの茴香のお酒に酔いながら、
オージュ公爵のおしゃべり馬のあとを追い、
シドロランの川船の居間で太陽に当たっていたような気分でした。

読み終わったら終わったで、訳者あとがきが興味深く楽しくて勉強になります。
この翻訳者あっての訳本なのだなあとつくづく思います。
ほんとに素晴らしい。

ちょっとお高い本ですけど、絶対にお薦め!!

「青い花」(レーモン・クノー・コレクション)
 水声社 ¥3,150

http://www.amazon.co.jp/dp/489176872X/ref=sr_1_5?s=books&ie=UTF8&qid=1363764945&sr=1-5