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「人魚の石」田辺青蛙

2017.12.05 2017

円城塔さんと田辺青蛙さんからはコンサートの時にお花をいただくことがあり、
ご覧になったアリプロファンも多いと思いますが、
 
お知り合いだからというわけではなく、
この本、ほんとにおもしろいので超オススメ!
 

人魚は人魚姫な人魚ではなくうお太郎という名の男の人魚で、
天狗も出てきたりするジャポネスクな妖(あやかし)の長編小説。
京都の山寺を継ぐことになった冴えない若者ユキオは
“ 石を聞く”ことのできる一族に生まれたことを知り、
その能力に目覚め様々な石と関わりつつ、うお太郎との奇妙な共同生活が続き……。
 
ふたりのやりとりはオモロイし、
(うお太郎の出現のあたりは「X-ファイル」の初期の異形生物シリーズを思い出してしまった・・)
石にはユキオの子供時代の楽しい思い出や封印された記憶が閉じ込められていたり、
幽霊を封じ込めた水晶や、未来を見せるものなど、魔な「石」の描写も奇妙で美しく、
かつて村で起きた殺人事件の凄惨な影も曳き……。

なんかこう、ぬめっと、さらっと、
綴られ紡がれていく文体と物語が懐かしいような身近なような、
愉しさと怖さを見せてくれるのです。
 
 
私は今年読んだ本のなかで
いちばんおもしろくて好きかもしれない。


装丁も素敵!まさに人魚の石!
(kindle版 もあります。)
この魔冬の読書にふさわしき一冊。
 
「人魚の石」田辺青蛙  ¥1,836徳間書店