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群れは曼珠沙華

2022.09.23 2022

大抵の花や木との出会いは子供の頃で、
庭や道ばたや野原、公園、神社の境内や植物園などで知り合っていく。
いつの間にかちゃんと名も憶えていて、
季節ごとの再会を当たり前に喜ぶことができる。
言葉を交わさない、大勢の友人たち。

特に気に入っている花、さほど興味がなくとも挨拶くらいはする花など、
大人になるにつれ特別扱いは顕著になっていくけれど、
初めての出会いの時がいつまでも心に残っていることがあったりする。

私の場合、それは鶏頭と彼岸花。
私の通っていた幼稚園はお宮のすぐ隣にあり、帰り路は参道。
聳える石の鳥居の入り口まで、母と小さな弟と、または曾祖母と、歩く。
脇には一年中様々な草花が植えられて、野花は幼児の目線で開く。
鶏頭は夏の間も咲いていたけれど、彼岸花は九月の半ば頃。
九月生まれの私はもうすぐお誕生日が来るというちょっぴり誇らしいような気持ちを、
日に日に涼しくなる風のなかで抱えて歩いていると
脇には所々で群れなす細い火花のような赤い彼岸花。

マンジュシャゲ、マンジュシャカという呼び名はあとから知ったと思う。
「曼珠沙華」という漢字にときめく年頃になってから。
子供の頃はヒガンバナ。まるで火岸花と書いた方が似合うような揺れる炎の花。
葉はなく、いつか小さな私の背を越えてしまいそうなほどまっすぐに伸びた茎。

今もこの季節、ヒガンバナの咲いているのを見つけると
私はあの参道に立って風に吹かれているような気になる。
ようやく訪れた秋の幸福感と、物寂しさの間で。

歌のなかではどうしても禍々しさを伴わせたくなる曼珠沙華なのだけど。

・・・
曼珠沙華の里、巾着田のことは前から知っていて
いつも行きたいなと思っていて、
お手伝いさんが庭に咲いているという黄色の(!)曼珠沙華を持ってきてくれたことから
その話になり母上も未訪ゆえ行ってみたいということになり、
夏のムーミン谷ドライブのように、巾着田へ初秋のドライブ。

あれだけの群生だともっと禍々しいんだと思っていたけれど
ぜんぜん長閑だった笑。
人がいなければもっと素敵かもだけど。
高麗川の水がきれいで、河川敷まで降りたかった。

Instaでも書いたけど
「恋闇路」の冒頭、
秋に歌うのだったらこう歌うわ。

   啼くのは鴉か
   魂迎鳥か
   群れは曼珠沙華
   燃える道行

心中の道行きにはやっぱマンジュシャカが似合うのだけどね。
「恋闇路」は夏なんですっ。
笑。

今だけ限定で初秋編でありんす。